調剤報酬改定内容発表から1ヵ月
2020年度調剤報酬改定の内容が発表されてから、1か月が経過しました。薬局経営に及ぼす影響について検証を進められている頃ではないでしょうか。
業界の方向性に合致した店舗経営を実現し、変化に適応していくためには、正確な情報収集が不可欠です。
これまでの流れを振り返りながら、今回の改定概要および我々が予測するリスクをご説明できればと思います。
2020年度調剤報酬改定までの流れ
これまでに、現在の薬局経営の方向性を定めた3つの重要施策があります。
2015年10月23日 患者のための薬局ビジョン
地域包括ケアシステムの中で求められる薬局像が示されました。以後の制度設計の基礎にもなっています。患者本位の医薬分業の実現に向けて、「かかりつけ薬剤師・薬局」を推進すること。そして、患者等のニーズに応じて強化・充実すべき機能として「健康サポート機能」と「高度薬学管理機能」が提示されました。
2019年4月2日 調剤業務のあり方について
通称、0402通知と呼ばれるもので、対人業務への転換にあたり薬剤師の業務割合を再編成するための考え方が示されました。薬剤師以外の者に実施させることが可能な業務の基本的な考え方が整理されたと言えます。
2019年12月4日 改正薬機法の公布
薬局機能分類、投薬期間中フォロー、オンライン服薬指導等が法制化されました。
そして今回の2020年度調剤報酬改定は、これらの考え方をより加速させるために打ち出されています。
それはつまり、「対物業務から対人業務への構造転換」を否応なしに迫られていると言えます。
構造転換は、業務内容・時間の配分が激変することに他ならず、大きな負担であることは明白です。
2020年度調剤報酬改定の主なポイント
では、今回の改定概要を見てみます。
算定要件の厳格化、設定点数の引き下げがみられた項目
【調剤基本料】
- 調剤基本料2、3、特別の対象薬局が拡大(経営効率性を考慮した点数へ)
- 地域支援体制加算の実績要件見直し
- 後発品加算の傾斜配点
【調剤料】
- 内服薬について見直され、日数に比例した①1~7日分、②8~14日分の点数をそれぞれ定額化(日数分換算を廃止)
新設点数、算定要件の緩和、設定点数の引き上げがみられた項目
【調剤基本料】
- 地域支援体制加算の評価の見直し
【薬学管理料】
- 薬学管理料の充実による対人業務の評価(喘息、糖尿病、がん、経管投与、かかりつけ、残薬、重複投与、分割)
- 医薬/薬薬連携の評価(残薬、退院、がん化学療法)
- オンライン(遠隔)服薬指導の評価
- 在宅医療の実状に合わせた評価の追加
最も影響を受けやすい薬局とは
こうした変更点を踏まえると、今回の改定で影響を受けやすい薬局のタイプは、以下の2グループに分けられると考えます。
【グループ1】
最も影響が出るのは、「調剤基本料1&地域支援体制加算」が算定できなくなるケースです。個店であれば、月間1,800~2,000回の受付、グループでは全体で35,000回~40,000回の受付で集中率95%以上の薬局です。
加えて、数は多くないと思われますが、診療所の敷地内薬局で特別調剤基本料に移行する薬局も、このケースに該当するでしょう。いわゆる典型的な門前薬局と言われ、効率の点では在庫も絞れた上に来局者数も手堅く、従来は経営的にも優れていた形態のはずでした。
地域支援体制加算は、調剤基本料1であれば算定はそれほど難しくありませんが、調剤基本料1から外れると一気に要件ハードルが上がり、地域支援体制加算が算定できなくなる薬局が続出することが見込まれます。調剤基本料1から外れて地域支援体制加算も算定できないとなると、処方箋1枚あたり500円以上の減額になり、枚数がそれなりに多い店舗であれば影響はかなり大きいと言えます。
【グループ2】
そして次に影響が及ぶところは、「調剤基本料1&地域支援体制加算」は取れるが、14日処方が多く、対物業務に専念してきた薬局です。例えば、上述した受付回数で、集中率はそれなりに高いが95%には達していないところや、医療モール内の薬局などが該当しやすいと考えられます。
診療所からの処方箋が多く、14日処方がメインになっている薬局では、今回の改定において調剤料が大きく減ってしまいます(3剤であれば1枚あたり240円くらい)。受付回数が多いところは総額が大きくなる一方、特に受付回数がそれほど多くない薬局は、もともとの粗利も高くない可能性が考えられるため、かなり大きな影響を受けると言えるでしょう。
4月以降、こうした影響が顕在化していくことが予測されます。
経営資源を統合することで、こうした課題を乗り越え、地域医療を存続させることは可能です。上述したような影響が予想される場合には、ぜひ早期にご相談ください。
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