経営者としての奔走
第二章「二代目の薬局経営」
第一章でお伝えしたとおり、私は父の他界に伴い引き継ぎのない調剤薬局の事業承継をしました。
※第一章は、父から後を継いだ二代目経営者のM&Aの話
について書かせていただきました。
薬剤師ではあるものの、これまで薬局業界には身を置かず、製薬業界にいた私は、薬局業界のほんの上辺しか分からない状況でした。
まずやったことは、薬局に関わる全ての方々への報告と説明そして確認でした。
処方元の先生や担当介護施設の理事長、それらスタッフの方々、
取引先の卸、金融機関、各業者、諸々、そして薬局の従業員の皆さん、
少しずつ父が築き上げてきた人と人の繋がりが分かると同時に、
少しずつ父がどの様なやり方で経営をしてきたか私なりに分かってきました。
日々、点の点を繋ぎ合わせるような作業でした。
良くも悪くも未熟な私には、
父が築き上げてきたものの大きさとこれまでの苦労は、
偉大さとその反面、衝撃と不安で押し潰されそうにもなりました。
父の様に出来るのか…
幸いにも、父の息子である私を快く受け入れて頂いた関係者の皆様には本当に感謝しています。
また、当初からサポートして頂いた税理士や社会保険労務士の先生には本当に助けられました。
お二人が居なければ事業承継すらままならなかったかもしれません。
その後は、
改定のたびに厳しくなる薬局業界において、
どのような経営方針で立ち向かうか…
父の様に薬局運営を行いながら、
激動の薬局業界に飲み込まれない様に2代目のやり方を確立していきたい。
漠然ともっと良くしたい。
そんな想いで、薬剤師としての現場経験、薬局業界、
経営学、法務、財務、労務、の勉強に明け暮れました。
勉強しながら、少しずつ私なりの方針を掲げ、
それに従業員の皆さんはついてきてくれました。
所謂「古き良き薬局」から「いま求められる薬局」へ少しずつ変化していきました。
ですが、
勉強すればする程…
将来を考えれば考える程…
私が経営をしない方が良いのでは?
私よりももっと経験やノウハウ、
資金力がある経営者が経営をした方が、薬局のために、
そしてそこに関わる従業員、処方元の先生、患者さん、そして地域医療のためになるのでは?
そう真剣に思うようになりました。
生前、父は一回も「後を継いでほしい」とは言いませんでした。
それを言わなかった理由が、今やっと、分かった気がしたのです。
次第にM&Aという選択肢が頭の中をぐるぐると回り始めたのでした。
M&Aについて何も知らない私は、
M&Aの仲介業者に接触し情報を集めました。
・ストラクチャー
・経営者の退職や継続雇用の選択肢
・職員への影響
・M&Aフローの流れ
・様々な事例
等々
情報収集するにつれ、これまでのM&Aに対するイメージが払拭され、
M&Aの可能性を感じるようになってきました。
そして、その末に、私はM&Aを決断するのでした。
この第二章を振り返ると、
経営者は、将来を見据えた経営判断の一つとしての「M&A」について、
そこにどんな可能性があるのか前もって知っておくべきだと感じました。
激動の薬局業務の変化の中で、その判断は今すぐでは無くても遠い様な近い将来に、
その薬局に関わる全ての人がハッピーになれる可能性が「M&A」にはあると思います。
第三章へ続く