コロナ禍の影響による患者数の減少、調剤報酬改定による収益の減少など、厳しい状況に立たされている調剤薬局業界ですが、薬局数は増え続けており、令和2年に行われた調査で薬局数は6万件を超えました。
しかし、このまま薬局数が増え続けていくかといえば、そういう訳ではなく、ここからは薬局の淘汰が始まると言われております。
実際に2021年度の薬局倒産件数は04年度以降で最多の23件でした。
また、大手調剤薬局チェーンや、近年勢いのあるドラッグストアチェーンによる買収は進むでしょう。
では、関西エリアでのM&A事情はいったいどうなっているのでしょうか。
関西エリアの主なM&Aの事例を一部ご紹介
まずはじめに、関西エリアの主なM&Aの事例をご紹介します。
2019年以降の事例を紹介しておりますが、ここには記載されていないM&Aも数多く行われています。
クオールHDによる勝原薬局の子会社化 2021年1月
兵庫県11店舗
売上高 非公開
取得金額 非公開
ココカラファインによるフタツカHDの子会社化 2020年11月
関西を中心に70店舗
売上高 約120憶円
取得金額 非公開
ファーマライズホールディングスによるヘルシーワークの子会社化 2020年3月
大阪府22店舗、兵庫県1店舗、和歌山県3店舗、奈良県4店舗
売上高 約25億円
取得金額 非公開
ソフィアHDによるわかば薬局(和歌山県)譲受 2020年2月
和歌山県2店舗
売上高 約2.7億円
取得金額 約1億円
ソフィアHDによるメディプランの調剤薬局事業の譲受 2019年9月
大阪府3店舗
売上高 約8億円
取得金額 約2.3億円
ソフィアホールディングスによる泉州薬局の子会社化 2019年2月
大阪府7店舗
売上高は約11.5億円
取得価額は約10億円
関東エリアと比較した関西エリアの薬局の傾向
調剤薬局と人口に関するデータ
参照元データ
厚生統計要覧(令和3年度 第2-87表)
日本薬剤師会(令和4年2月 医薬分業進捗状況)
総務省統計局(日本の統計2022年 2-2都道府県別人口と人口増減率)
上記表に関西エリアの調剤薬局事情が分かるよう数値をまとめています、
また、比較のために関東エリアについても同じ指標の数値をまとめています。
当然ではありますが、人口に比例して薬局数も大きくなっています。
ここで注目して欲しいのは開設者兼管理薬剤師(開設者が自ら管理している薬局数)の割合です。
近年M&Aが頻繁に行われている印象がありますが、まだまだ個人店も多いことが分かります。
(ある程度の規模の法人になると、開設者兼管理薬剤師で登録されていることは稀。)
因みに開設者兼管理薬剤師のお店の割合が、全国で一番大きい都道府県が和歌山県で23.3%です。
基本的に都市部は人口が多く、チェーン店が需要を見込んで参入しやすいと考えると、開設者兼管理薬剤師の割合が低くなることが自然です。
しかし、大阪府に関しては12.7%とかなり割合が高いです。
関西エリア全体で見ても約11%なので、関東と比べると約2倍の割合で個人店が存在することになります。
今後の関西エリアでのM&A市場
帝国データバンクの報告によると、2021年の社長の平均年齢は 60.3 歳(前年比+0.2 歳)で、調査を開始した 1990 年以降右肩上がりの状況が続き、31 年連続で過去最高を更新しました。
薬局でも同じ状況が考えられ、後継者不在でのご相談は相変わらず多くございます。
また、最近ではまだ若い40代50代の経営者から薬局譲渡のご相談が増えております。
今までの立地さえ良ければ成り立っていた薬局経営から、オンライン対応、在宅対応、地域連携対応など変化に対応できる薬局出なければ生き残れなくなっており、将来を見据え第三者への譲渡という選択肢も一般的になりつつあります。
関西エリアでは経営者兼管理薬剤師の薬局の割合がが多いことから、今後、薬局の淘汰が進み開設者兼管理薬剤師の店舗割合も減っていき、関西エリアも関東エリアと同じ5%程度の割合になるかもしれません。
開設者兼管理薬剤師の店舗割合が11%から5%ほど減少すると仮定すると、関西エリアの薬局数1万店舗の5%、500店舗ほどM&Aで再編が進むかもしれません。
医薬分業率を見ても、関西エリアは関東エリアに比べ10%ほど分業率が低くなっております。
これらを考えると、まだまだ関西エリアは薬局の出店やM&Aという視点で見ると、良い市場だと考えられるかもしれません。
これから関西エリアで店舗を拡大していきたい方も、譲渡を検討している方も、調剤薬局のM&A経験豊富な専門家に相談されてはいかがでしょうか。