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スタッフコラム

薬学部新設廃止の背景にある薬剤師の需要と供給、求められる薬学部の変革とは


近年、長らく売り手市場だった薬剤師が、都市部では買い手市場へと潮流が変わっています。いまや薬剤師は余る、と聞いたことのある薬剤師は多いでしょう。そうした状況のなか、薬剤師を世に送り出す薬学部は供給過多なのでしょうか。今回のコラムでは、薬学部と薬剤師をめぐる状況について、お話しします。

薬剤師 将来 需要 供給 余る出典:厚生労働省「薬剤師の需給動向の予測および薬剤師の専門性確保に必要な研修内容等に関する研究」より

薬剤師の供給数は、すでに需要数を上回っている

厚生労働省の推計によると、2020年に約32万人だった薬剤師の数が、2045年には約43万人になると見られています。これは病院や薬局で必要な人数を大幅に上回る事になり、就職難や待遇の悪化などが懸念されます。では、近年相次いだ薬学部の新設は、薬剤師の供給過多に拍車をかけているのでしょうか。2012年に約10,000人だった国試受験者は、2016年に約15,000人まで増加しました。比例するかのように合格者も2012年の約8,600名から2016年の約11,500名にまで増加しました。そして、ピークを迎えた2016年から2023年にいたるまで合格者数と合格率は減少しています。とはいえ、2012年に約8,600名だった合格者数に比べ、2023年では約9,600名と、薬学部が増えたことで国試に合格する薬剤師も増加し、新規の供給数が多い状況ではあります。市場の需要を超える供給の一因として、国試の合格者数増加があげられ、合格者数は薬学部が送り出す受験生の数によりますから、薬学部の増加が薬剤師の供給過多を作り出していると言えるでしょう。もちろん、薬剤師不足に悩まれ続けている経営者の方々にとっては、非常にうれしいことかもしれません。

薬学部の新設廃止と例外

薬学部は2006年度に4年制から6年制になりましたが、2006年度の薬学部の数は66大学67学部だったのに対し、2021年度には77大学79学部となりました。しかし、文部科学省としては、これ以上薬学部を増やすことなく定員抑制で需要と供給のバランスを整えたい思惑もあります。特に、Covid-19の蔓延で改めて浮き彫りとなった医師不足に対し、薬剤師が多いとなれば、調整を望む声が大きくなるところでしょう。ましてや、2023年現在、薬剤師の供給数が需要をすでに上回っているとなれば、薬学部の新設に「待った」をかけるのもやむなし、といったところではないでしょうか。結果として、6年制薬学部について、文部科学省は2025年度以降の新設や定員増加を認めない方針を固めました。ただし例外として、薬剤師不足の都道府県は、新設・定員増を認められています。

増え続ける大学に求められる教育の質

日本国内の大学数は、1950年には約200校、1970年には約380校、2022年には約800校と増加しています。一方で、2022年度の出生数は80万人を下回って過去最低となっています。第1次ベビーブームの1949年は約270万人、第2次ベビーブームの1970年前半は約200万人です。大学数と出生数が反比例するなか、私立大学の薬学部では定員の80%以下という大学が約3割にものぼるなど、定員割れが相次ぎ、国家試験の合格率が著しく低い薬学部もあります。大学および薬学部は薬剤師を志す学生に対して、必要な教育の質を担保するためにどう取り組むのか、供給過多になりつつある薬剤師に質が求められると同時に、薬学部の質が求められています。

進む大学の統合と応募する薬剤師の多様化の時代

大学経営と人口減少は切っても切り離せない問題です。今や、日本の私立大学の約4割が定員割れの状態です。大学経営が安泰だった時代ははるか遠く、今日では不安要素で溢れています。さて、学校経営でもM&Aに近いことが行われていることをご存知でしょうか。国公立大学では、名古屋大学と岐阜大学、静岡大学と浜松医科大学などアンブレラ方式という形で統合が行われています。薬科大学や薬学部のある大学などでも同様の統合が予想されます。社会人のリカレント教育や、留学生の受け入れなどに力を入れている大学も多く、企業側の新卒採用に多様性が求められる時代になりつつあります。「薬剤師は余る」、そんな時代に薬剤師の学びなおしが当たり前になる日も遠くないかもしれません。

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