分かれる意見
「処方箋40枚当たり薬剤師1人」の員数規制の見直しについて議論されるようになって久しくなりました。
対物業務から対人業務へのシフトの流れの中で、処方箋枚数の数を大きくしようとか、小さくしようという意見が対立している状況です。
“処方箋枚数の上限の数を大きくしよう”と仰る方のお考えとしては、
業務ロボットやAI技術の発達により調剤業務の効率化がなされ、
今までよりも薬剤師がより1人1人の患者に時間をかけることができるようになる、という考え方に基づいているのではないかと思われます。
一方、”処方箋枚数の上限を小さくしよう”と仰る方のお考えとしては対人業務に力を入れるようになるとその分患者とのコミュニケーションに頭を使うため服薬指導の幅が広がり、その分時間もかかるようになる、という考え方に基づいているのではないかと思います。
しかしそもそも今後対物業務よりも対人業務の方がより重要視される中でこの議論は適切なのでしょうか。
枚数制限は適切?
2016年に公表された、厚生労働科学研究班
「薬局・薬剤師の業務実態の把握とその在り方に関する調査研究」の研究報告書によると、
研究班が2015年度に実施した薬局のタイムスタディ調査によって、院外処方箋1枚の調剤に要する薬局薬剤師の業務時間は平均12分前後に達することが示されました。
同調査は、偏りが生じないよう調査対象薬局を選定し全国の10薬局を対象に実施されました。
複数の調査員が薬剤師の横に張り付き、ストップウォッチを使って計測した厳密なものであるとされています。
受付から薬歴確認、疑義照会、計数調剤や計量調剤、監査、薬剤交付、服薬指導など一連の業務に薬剤師が費やした時間を計測したようです。
結果、短い薬局では平均9分50秒、長い薬局では平均14分34秒などバラつきはあったものの概ね12分前後を要するという結果になりました。
12分に40を乗すると480分、ちょうど8時間になるという理屈です。
ですがこの数値を全ての薬局に適応する事は、実態とはかけ離れていると言わざるを得ません。
なぜなら、処方箋1枚あたりにかかる時間は、処方元の診療科目によっても変わりますし、在宅専門薬局などの薬局の機能によっても変わるものだからです。
もし今後も処方箋1枚あたりにかかる時間を論点にすると、各薬剤師がどれだけ処方箋をさばくかという議論が続きます。
これから対人業務にシフトする中でこの規制が機能していない事は自明のことです。
恐らく今後薬局が専門化していく中で、薬剤師も専門化していきます。
そう考えると、現在の”処方箋40枚規制”は近い将来撤廃されていくと思われます。
撤廃されたときに各薬局・各薬剤師は自身が担う役割を、再び見つめ直すことになるのではないでしょうか。
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