調剤薬局の承継については、多額のお金が必要になることが多いです。全てを自己資金で賄える人がいる一方で、多くの開業希望の方は自己資金では承継開業費用を賄えず、融資を検討することになります。「融資を受ける場合は、どこで借りればいいの?」「どれくらい借りられるの?」当社が、普段よく受ける質問を中心に、ご紹介をさせていただきます。
薬局の承継開業にかかる費用の捻出
調剤薬局の承継開業には、案件の規模にもよりけりではありますが、1,000万円~5,000万円程のお金がかかります。
他の開業された薬剤師様はどのようにして資金を工面したのでしょうか?
冒頭にも記載したように、ごく一部では「全額自己資金」という方も存在しています。
全額自己資金で承継開業が可能なケースとしては、
- 開業に向けて長い時間をかけてコツコツと資金を貯めた
- 案件の規模が小さく、追加の資金が必要なかった
- 退職金などのまとまった資金を開業に宛てられた
というパターンが多いです。
また、金融機関からの融資ではなく、ご親類の方資金提供を踏まえて開業に踏み切った方もいらっしゃいます。
明確な金銭消費貸借契約書などは締結しない方も多いですが、中には、しっかりと金銭消費貸借契約書を締結し、両者間で返済スケジュールや利子等も明記した上でお話を進める方もいらっしゃいます。
一番多いのは、自己資金+金融機関借入で資金を調達するケースです。
薬局の承継開業には、決して低くはない初期投資額が必要になるため、多くの方は、金融機関からも借入をされた上で、開業を叶えられています。
日本政策金融公庫からの借入の場合
一言で「金融機関」とまとめたとしても、日本国内には無数の金融機関が存在しており、開業を希望される薬剤師様によっては、どこに相談するのが良いのかが悩みのタネとなってしまいます。
弊社を通じて開業された方の中で最も多く利用されているのは、
「日本政策金融公庫」の「新創業融資制度」です。
あまり聞きなれない名前の金融機関かと思われますが、日本政策金融公庫は100%国が出資している金融機関であり、創業融資に積極的で、一定の条件をクリアすることができれば、無担保・無保証で融資を受けられることが特徴です。
国100%出資の金融機関ですので、国の政策の影響を大きく受けることも特徴の一つです。
大きな流れとして国は、独立・開業や中小企業の支援をすることで、事業者を増やしたり、事業の拡大に寄与することで、経済を活性化させようとしています。
そのため、大手の銀行だと門前払いをされてしまうことの多い、個人の開業希望者にも、比較的、柔軟に話を聞き、融資の門戸を開けてくださっています。
ただ、新型コロナウイルス蔓延の影響によって、国全体の経済活動が落ち込んでいる中では、特別融資などによって既存の中小企業優先でサポートする動きが見受けられ、新規開業の融資は基準が厳しくなったり、融資審査が長引いたりなど、通常時よりも新規開業にマイナスの影響が出ているようにみえます。
承継スケジュールやこれまで以上に自己資金の金額が重要になっていると言えるでしょう。
その他金融機関からの借入の場合
承継開業を予定している薬局のある地域の地方銀行や信用金庫から融資を得て開業をするケースも少なくありません。
薬局の経営者様(とくに売主様)より、それまで利用してきた金融機関を紹介されることもありますが、この場合は、金融機関側が薬局の運営状況が既にわかっている状態であるため、安心して融資を実行してくださることも多いです。
しかし、一般的な目線で言えば、経営実績がなく、個人がこれから開業をしようとする場合には、金融機関側の視点でいえばリスクが大きく、信用があまりない状態であるため、「信用保証協会をつけてほしい」という条件を提示される場合もあります。
信用保証協会は、日本政策金融公庫と同じように、薬局以外の新規開業・独立などの融資でよく利用されるものになりますが、融資審査の期間が日本政策金融公庫よりも長く、より開業までに時間がかかってしまうという点については、留意しておきましょう。
また、経営者の方のご紹介などなしで、信頼や情報ゼロの状態で信用金庫等の金融機関に融資相談をしに行く場合、担当者が薬局事業承継に知識や理解がないケースもありますので、しっかりと準備をしていく必要があります。
中小企業組合と政府が共同出資して作られた「商工中金」から融資を受けるパターンも少しずつ増加しています。
いくらまで借りられるのか
日本政策金融公庫や信用保証協会含め、信用金庫等から融資を受けるパターンが多いことは、上記で記載した通りですが、「いくらまで借りられるのか」これも不明確なところかと思いますので、解説していきます。
承継開業の場合は、現在の経営状況での収益性がわかっているため、ある程度将来の収益性も見通せるため、承継する薬局によってはこの通りではないことも多々ありますが、一般的に「融資を受けたい額の3割程度は自己資金が必要」とされています。これには大きく分けて2つの理由があると言われています。
1:日本政策金融公庫の申し込み条件
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」が、弊社を通じて開業された方が最も利用されている融資制度ですが、この融資制度の申し込み条件として、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」というものがあります。こちらは、「融資審査を申し込むための条件」となりますので、最低限と認識すると良いかと思われます。
この自己資金要件は、 実は少し前まで「創業資金総額の3分の1以上」の規定であり、緩和されて現在の「10分の1」となっているのです。
日本政策金融公庫も根本的には「3分の1程度はほしい」と考えていると考えられるため、開業資金総額の3割程度の自己資金を貯めておくとベターと言えるでしょう。
また、日本政策金融公庫が発行している新規開業に関する2020年度の調査では、全業種における開業資金平均合計額は「1,194万円」に対し、自己資金が「266万円」、金融機関等からの借入が「825万円」となっており、全開業資金における自己資金の割合は22%程度、融資金額に対する自己資金は33%程度となっており、自己資金の3倍程度が融資実行の基準になり得ると言えるかもしれません
2:倒産等の危険性の点
一般的な経営の指標として、自己資本比率というものがあります。
企業は返済が不要な自己資本(資金)だけではなく、金融機関などから借入をして運営していくことは一般的なことですが、返済が不要な自己資本が全ての資本の内どれくらいの割合を占めているのかを示すものが自己資本比率です。
薬局に限らず、事業経営の現場では、自己資本比率によって倒産の危険性などを測るということが行われます。業種や業態によってももちろん異なりますが、一般的に自己資本比率が30%を超えていることが安定して経営できる基準とされています。
逆に、30%よりも低くなってくると倒産等の危険性が少しずつ高まると言われているため、創業(承継開業)のタイミングから、この30%の基準に近い方が中長期的なリスクが少ないと見られるため、自己資金が3割程度求められると言えます。
ここまで、創業融資を受けるための金融機関選びや必要な自己資金の割合などを見てきましたが、開業される方のご経験や承継を希望する薬局の規模、現在の自己資金の金額によっても、大きく変わってまいります。
初めての開業となり、不安なことも多いかと思いますので、まずは当社のアドバイザーに無料で相談してみてはいかがでしょうか。