令和4年度の診療報酬改定では、新たに「リフィル処方箋」という制度が導入される予定です。
この制度いったいどのようなものになるのでしょうか。
アメリカ、イギリス、フランスでは既に制度化されているリフィル処方箋。
日本でも平成22年(2010年)あたりから、当制度について議論がなされてきましたが、
日本医師会などの反発により制度化に向けての話が進んでいませんでした。
そもそもリフィル処方箋とは何のことなのか。
また制度化された際のメリットやデメリットについてまとめてみました。
一定の期間内で反復的に使用できるリフィル処方箋
「リフィル処方箋とは一定の定められた期間内に反復使用できる処方箋のこと」です。
※リフィルとは補給・詰め替え品・2杯目という意味の英語です。
今までの通常の処方箋は医師が決めた日数分の薬を一度だけもらえるものでしたが、
リフィル処方箋は定められた期間内・回数内であれば同じ処方箋で
医師の診療なしで繰り返し薬をもらえることになります。
ただし、分割調剤とは異なる制度ですので、ご注意ください。
※分割調剤とは「医師の指示により最大3回に分けて調剤を行うこと」で、
平成28年度の診療報酬改定により、開始されたもの。
長期処方や薬剤の適正な保管・使用に際して、「薬剤師のサポートが必要」と
医師が判断した場合に発行される分割調剤の処方箋のことです。
リフィル処方箋は1枚の処方箋で複数回利用できるため、
処方箋が最大3枚まで増える分割調剤に比べて便利な制度と言えそうです。
リフィル処方箋が導入されることのメリット
1:薬をもらうためだけの受診を抑制することができるので
患者さんの負担軽減と医師の業務負担も軽減できる。
2:受診回数が減り患者さんの医療費負担が減ることにより、国の医療費削減にも繋がる。
特に慢性疾患を持っており、安定した症状の方には便利なものになるでしょう。
リフィル処方箋が導入されることのデメリット
1:医師の診察がなくても薬を処方されることになるため医療事故に繋がる可能性がある。
2:経過観察の機会が減るので症状の変化に気付きにくくなり健康被害に繋がる可能性がある。
3:患者さんの受診回数が減ることで、患者さんや国の医療費削減にはなるが、
反対に病院やクリニック側としては収入の減少に繋がる。※病院やクリニックによる
より一層、かかりつけ薬局として選んでもらう工夫が必要になる?
中央社会保険医療協議会の総会資料によると、
『薬剤師は、リフィル処方箋の交付を受けた患者に対して、
継続的な薬学的管理指導のため、同一の保険薬局で調剤を受けるべきである旨を説明すること』
と記されています。
リフィル処方箋は、同じ薬局に複数回持って行くことが前提とされています。
2回目以降は病院に行かずに、薬局に行けば薬を処方してもらえる制度ですので、
患者としては、病院の近くの薬局ではなく自宅近くの薬局を選ぶようになるはずです。
そのため今後はより一層、患者さんから
「かかりつけ薬局」として選んでもらえる薬局となるために工夫が必要となります。
薬局経営者や薬剤師の方からは賛否両論の声
実際に導入されたら医師の負担が減る一方、薬剤師の負担や責任が大きくなります。
普段、私たちCBコンサルティングでは薬局経営者や薬剤師の方と話す機会が多く、
リフィル処方箋についての話題が増えてきています。
薬局経営者からは、リフィル処方箋について様々な意見をお聞きします。
「責任の所在が曖昧になるのであまり乗り気でない」というご意見や、
「これまでもそのくらいの責任を持って薬を処方してきたので当たり前のことだ」
と前向きなご意見があります。
前向きにとらえる方もいれば、そうでない方もおり賛否両論の声があります。
対物業務から対人業務へと薬剤師に求められるものが変化してきている中で、
リフィル処方箋導入によってより一層、薬学的知識や観察・判断能力だけでなく、
患者さんやその家族に信頼される事も重要になってくるでしょう。