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スタッフコラム

令和4年度診療報酬改定を経てM&A市場はどう変遷していくか


経営者様におかれましては、令和4年度診療報酬改定の短冊がでた3月頃から情報収集を開始されている方もいらっしゃれば、一旦は要点のみの把握で留め、正確な分析はこれから、という経営者様もいらっしゃることでしょう。

今回の令和4年度診療報酬改定を受けて、調剤薬局のM&A市場はどう変遷していくのか

ご譲渡 / ご譲受を検討されている法人様から、ご質問を受けることも非常に多いため、今回は弊社からの分析・予想をまとめましたので、情報収集の一環としてぜひご覧ください。

改定のポイントから見る薬局M&A市場

■令和4年度診療報酬改定のポイント■
主要なポイントは以下の4点ではないでしょうか。

①調剤基本料の改定
②後発品加算のさらなる締め付け
③特別調剤基本料の厳正化
④地域支援体制加算の基準引き上げ

この中でM&A市場に最も大きく影響を及ぼすと考えられるのが、調剤基本料3の改定「調剤基本料3-ハの新設」です。

多くの地域密着型薬局は調剤基本料1のため、「自社には関係のないこと」と考えておられる経営者様も多くいらっしゃいますが、ことM&A市場ではそうではありません。

まずは新設されました調剤基本料3-ハについて詳しく見ていきましょう。

『調剤基本料3-ハ 32点
同一グループの保険薬局における処方箋の受付回数の合計が一月に 四十 万回を超える
又は同一グループの保険薬局の数が三百以上のグループに属する保険薬局のうち、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合が八割5分以下であること。 』
(参照:厚生労働省 『令和4年度診療報酬改定について 第2 1. 個別改定項目について』)

ポイントは3-ロと同様、新たな基準として「保険薬局300以上のグループ」というルールが追加された点です。
3-ロ(300店舗以上かつ集中率が85%)と新設された3-ハで、店舗数のルールが追加されたことで、自社の店舗が300店以上の中堅~大手グループとしては大きな影響となることでしょう。

具体的にどのような影響が考えられるでしょうか。
譲受側、譲渡側に分けて分析してみましょう。

チェーン薬局の投資の抑制&譲受法人の変容

■譲受側への影響■
 ・大手~中堅チェーンの投資の抑制
 ・地場チェーン、地域密着型薬局では買収検討の活発化

今回の3-ハの新設によって大手は勿論、300店舗以上、あるいはそれに類する中堅チェーンも対象となったため、それらのチェーン薬局の展開方針は見直しのメスが入ると思われます。
自社で調剤基本料が3になってしまうと、買収した店舗も3の基準に該当してしまうため、その店舗は大幅な減収となります。

3-ロ、3-ハの違いは集中率の違いですので、仮に集中率が85%以上の薬局を調剤基本料3に該当する法人が買収すると、調剤基本料1の状態から一枚当たり26点減、年間処方箋枚数15,000枚の薬局だと、3,900,000円の減益となります(売上が下がるだけでなく、技術料は原材料費を考慮しない収益なので、そのまま粗利・営業利益が減少するイメージです)。

今まで積極的に買収検討できていた大手中堅の買手法人も、上記のような目線を基に薬局の収益を計算し、投資目線を設定しますので、おのずと積極的な投資は見込めなくなってくるでしょう。

一方で、300店舗のテーブルに乗らない地場チェーン、地域密着型薬局にとっては、大きく出資をして展開に打ち出すチャンスともいえる機会ですので、買収検討が活発化することが考えられます。

取引価額の下落&売手市場から買手市場へ~

■譲渡側への影響■
 ・買手不足による取引価額の下落
 ・薬局M&Aは売手市場から買手市場への変貌?

一番のポイントは買手不足による取引価額の下落が考えられる点です。
取引価額の下落=譲渡対価の下落と考えてもいいでしょう。

一般的な感覚として、事業価値・企業価値はあくまで自社の業績次第のもので、従ってM&Aの取引の際の譲渡対価も自社の業績のもの、という感覚の経営者様が多いかと思われます。
勿論、事業価値・企業価値は、自社の業績を基に算出するものではあるため、その考えは間違いではありません。

一方で「M&A取引」という形になると、譲受先は「投資」として金額を算出いたします。
以前であれば、5年の投資回収が見込めるのであれば、気軽に投資できていた案件に対しても、譲受先の業績が悪化していた場合「3年の投資回収」が見込めなければ投資を行わないという判断が出てまいります。

大きく今まで投資を続けてきたチェーングループの目線が厳しくなるのでは、という話を前段でいたしましたが、その影響は譲渡側のオーナー様(あるいは法人)の譲渡対価にも影響が出る可能性も捨てきれません。

最後に~5年後、10年後の未来を見据えて~

度重なる報酬改定により、「効率的な経営をしている薬局=チェーン薬局への締め付け」は今後も行われるでしょう。
薬局M&A市場では「今日より高く売れる日はない」という言葉を耳にしますが、今回の調剤報酬改定でより現実味を増したと考えております。

改めて、自社の5年後、10年後の方針を見通す中で、展開或いはこうした出口戦略の点についても、考えを馳せていただければと思います。

M&Aのご相談はどうぞお気軽にお問い合わせください。