近年では薬局業界においても「2025年問題」が話題にあがっております。
日本の総人口は減少フェーズに入り、高齢者の人口は増加することで起こる問題とは何でしょうか。
2025年を目前に、薬局業界ではどういった動きがされているのかお伝えします。
今さら聞けない…2025年問題ってなに?
2025年には、いわゆる「団塊の世代」約800万人全員が、後期高齢者と呼ばれる75歳以上になります。
厚生労働省のデータによると、後期高齢者の割合は、日本の全人口:1億2,254万人に対し約18%を占める2,180万人になると言われ、65歳である高齢者の人数も含めると3,677万人に達し、全人口の30%を占めることになります。
2025年問題とは、このように日本が超高齢化社会に入っていくことで起こる様々な問題を指していますが、具体的にはどのような問題があげられるのでしょうか。
一般的によく言われるのが、医療の問題、介護の問題、またそれに付随して起こる社会保障費増大の問題です。
高齢者が増えれば増えるほど、これらの問題が深刻化することは何となくわかる気もしますが、次の章で少し詳しくご説明させていただきます。
2025年問題で論じられる3つの大きな問題
(1)医療の問題
年齢が高まるにつれ、病院に通う必要は増えていきます。一方で、病院数は1999年をピークに減少傾向となっており、近年では倒産する病院も後を絶ちません。
また、医療機関で従事する医師や看護師も慢性的な人員不足が叫ばれております。つまり医療の受け入れ態勢と、医療を必要とする高齢者の、需要と供給のバランスが崩れ、医療現場では対応しきれないケースが増えていくと考えられます。
さらに、それに伴う医療費も莫大な金額となります。高齢者の医療費の自己負担額の多くは1割なので、残りの費用は税金から賄われます。
医療費の金額は年々上がっている状況で、今のままの税金収入では破綻も近いと言われています。
(2)介護の問題
高齢者が増えるに従い、当然、介護施設・サービスを利用される高齢者も増えていきます。
とくに都心部では介護施設数が足りない傾向が強く、特養や老健等の入所待ちをする高齢者が非常に増えている状況です。国もただ手をこまねいているわけではなく、例えば、2020年までにサービス付き高齢者住宅を60万戸まで増やす計画を立てたりしていましたが、事業の採算性や採用難などの問題から、目標だった2020年の整備進捗率は約42%にとどまっています。
また、施設があったとしても、後継者がその費用を賄えず年金が底をついたり、生活保護に頼らざるを得ない高齢者が増えてきていることも深刻な社会現象となっています。
(3)社会保障費の問題
近年でとくに問題視されています。
上述の通り、医療・介護を利用される方が増えることで、国や自治体の支出は大きく増えていきます。75歳以上になると、他の世代に比べ一人当たりの医療費や介護費は大幅に上昇します。
財務省によると、2018年の社会保障給付額が約121兆円だったのに対し、2025年には約140兆円程度にまで膨れ上がる見通しとなっております。
一方で日本の社会保障費を支える働く世代の割合は年々減少傾向にあるため、このままでは近い将来、日本の社会保障制度は破たんするのではとの声も上がっています。
2025年問題のもう一つの側面は後継者問題
冒頭で、2025年には、全人口における65歳以上の後継者の割合が30%を占める見込みであるとお話いたしました。それが、こと「経営者」に限っていうと、さらに深刻な高齢化が進んでいる状況です。
日本帝国データバンクが2022年3月に発表したデータによると、2021年における全国の社長の平均年齢は、60.3歳と過去最高を更新しました。
年齢別にみると30歳未満が0.2%、30代が3.2%、40代で17.1%、50代で27.6%、60代で26.9%、70代で20.2%、80代で4.7%となっております。
驚くべきは、2013年までは定年退職の年齢だった60歳以降の社長の割合が、2025年を待たずして、51.8%と半数を超えていることです。70代以上で見ても全体の約25%と、超高齢化の波が押し寄せています。
それに対して、後継者が決まっていない企業が多いことも問題となっております。
同じく帝国データバンクによると、後継者の有無について、60代の社長では約5割、70代では約4割、80代以上でも約3割が後継者不在となっている状況です。
社長交代率も、2021年で3.92%と引き続き低い水準で推移しており、事業継承の問題を一朝一夕で解決することは難しい局面となっています。
医療・薬局業界における後継者問題
では実際、医療業界ではどの程度高齢化が進んでいるのでしょうか。
厚生労働省が公表している2020年の「医師・歯科医師・薬剤師数、構成割合及び平均年齢」の構成表によると、「病院の開設者又は法人の代表者」は、50代で21.0%、60代で36.3%、70歳以上で32.2%となっております。
「病院の開設者又は法人の代表者」=医院・病院の院長や薬局の社長、ということになるので、医療にかかわる経営者の、68.5%が60代以上ということになります。驚くべき高齢化率です。
こちらの厚生労働省の統計は、2020年のものが現在公表されている中で最新のデータとなりますが、今現在である2022年は勿論、2025年には更なる高齢化が進んでいるものと予想されます。
薬局に関していうと、1990年代から、当時の厚生省の働きかけにもより、急速に医薬分業が進みました。その流れで、当時40代~50代だった製薬会社や卸の社員、病院の薬剤師等の多くが、懇意にしていた病院・医院の門前に薬局をつくり、薬局社長として独立しました。
実際、薬局様を回らせていただくなかでも、医薬分業の流れのなかで独立され、今60代~70代でいらっしゃる薬局社長と多くお会いしています。
そのなかでは、勿論既に代替わりを果たされている先もあれば、社内承継に向け準備をされている先もございます。ただ、様々な方とお話するなかで、明確な後継者がいらっしゃらず悩んでいるとのお話も同じくらい伺います。
最近では、2年ごとの診療報酬改定や毎年の薬価改定に加え、コロナ禍での患者減や先の見えない後発医薬品の流通難等で、ご子息やご息女がいらしても、承継をためらっている社長のお話をお聞きすることも増えました。
2025年問題とともに考える、医療機関でのM&Aのニーズ
2025年問題の一つとして、高齢者割合の増加に伴う、医療・介護施設等の受け皿不足のお話をさせていただきました。それに加えて、前章で触れた、医療系経営者の高齢化及び後継者不在の問題も深刻です。
ただでさえ、医療・介護の需要と供給のバランスが崩れていくなかで、これ以上受け皿が減ることは何としてでも防がなければなりません。
そこで、現在多くの医療法人や介護施設、薬局がとられている選択肢のひとつが、第三者への事業承継・M&Aです。
一口で「事業承継」「M&A」と言っても、本当にさまざまな形があります。
例えば、医療法人の場合は、事業譲渡や新設・吸収合併、出資持分の譲渡等々、通常の「企業」のM&Aとはまた違った複雑なスキームを用いることも少なくありません。
また、医療法人・薬局など施設形態に限らず、
・経営者や役員はすぐに引退するのか
・残留し暫く経営に関わり続けるのか
・スタッフのケア・処遇はどのようにするのか
・関係各所との関係性はどうなるのか
など、100の医療・介護施設(薬局)があれば、100通りの方法、ストーリーがあるのがM&Aです。
当社では、医療・介護・福祉業界に特化したM&Aを専門に行っており、これまで承継をお手伝いさせていただいた件数は950件以上と、業界において国内トップクラスの実績です。
多くの経営者様のお声に耳を傾けてきた自負がございます。
もし少しでも薬局経営に関するお悩みがございましたら、お気兼ねなくご連絡ください。