全国的においも、中小薬局のM&Aのご相談事例が増えております。
例にもれず、九州でもご相談件数は増えてきておりますが、そこにはどういった背景があるのでしょうか。
M&Aは、経営者が考える経営判断の一つですが、言い方を変えれば「自分の会社(薬局)という、いわば自分の子ともいえるものを第三者に譲渡する」という大きな決断です。
多くの薬局の経営者はどのようなケースで譲渡を考えるきっかけとなるのでしょうか。
当社が実際に九州でご相談いただいた事例をもとに解説していきたいと思います。
地場大手薬局の切り離しや労務管理上によりM&Aを実行するケース
九州エリアの特徴の一つとして「地場大手薬局の活躍」が挙げられます。全国大手チェーン薬局がいまいち参入しきれていないことの大きな要因の一つともいえるでしょう。
各県にそれぞれ代表する様な地場大手薬局の存在があり、それら法人の店舗の切り離しが続々と進んでおりますが、大きく2つの要因が考えられます。
①不採算店舗の切り離しで経営改善を図るケース
調剤報酬改定により基本料1→3に切り替わってしまった法人による切り離しが増えています。
元々基本料1で経営していた店舗が基本料3になってしまったために、場合によっては赤字店舗となってしまっている現状があります。
そうした店舗を、また基本料1に切り替わることを前提として少数店舗薬局の法人や開業希望薬剤師に買い取ってもらうM&A事例が増えています。
こうした事例は金額としても安価になりやすいため、買手側にとってもメリットがあります。
②薬剤師の労務管理上、M&Aを実行するケース
門前クリニックの開局時間に合わせて遅い時間まで開局せざるを得ない薬局に多い事例です。
そうした店舗では、管理薬剤師に大きな負担がかかってしまい残業時間が大きく膨れてしまいます。
医療現場の働き方改革や、社内のコンプライアンス向上がうたわれる昨今、会社としてもそういった薬局は見過ごせない状況となってきました。
そうした薬局は開業希望薬剤師に譲渡し、社長兼薬剤師として店舗を運営していただく方がお互いにとってメリットがあるのです。
経営疲れから大手法人に買収されるケース
前述で「全国大手チェーン薬局が参入しきれていない」と記載しましたが、とはいえ大手卸やドラッグストアの薬局事業参入は見過ごせない状況にあります。
実際に九州でも以下の相談ケースがございました。
■社長業を引退。現場薬剤師として譲渡先法人に残留するケース
現場薬剤師しとして残留するこのケースでは
「毎年の改定について行くことが疲れた。」
「人材難のため、人のやり繰りをすることが疲れた。」
というご相談のお声が多いです。
実際にいわゆるそうした社長業を、経営力やブランド力を持った大手法人に巻き取ってもらい、自身は店舗の薬剤師として譲渡先法人に雇ってもらうことで、調剤業務のみに専念することができるようになります。
譲渡後は譲渡対価が支払われる+通常よりも高額給与で雇ってもらえるケースが多いため、「自身が本当に引退する時期をゆっくり働きながら考えていける」ということです。
もちろん、そのまま譲渡対価を受け取って引退されるケースもあります。
地方でも見過ごせない、amazonの影響
amazonの調剤薬局事業参入の報道を受け、上場している調剤薬局・ドラッグストア各社の株価がほぼ全面安になったのは記憶に新しい記事ですが、九州においても動向を注視している経営者は多いです。
薬局としての在り方が大きく問われている今、今後amazonの動向次第では今よりも価値(譲渡対価)がつきづらくなる可能性もあります。
地方の薬局は、地域密着型薬局として生き残っていくための差別化を考えていくことも必要です。
一番重要なことは地域の患者のために薬局を存続させること。
もし今、店舗の展開もしくは譲渡を考えている場合は、そのタイミングも非常に重要となってくることでしょう。
現在の薬局の価値や企業の健康状態を知りたい、という経営者の方がいらっしゃれば、無料シミュレーションも実施しておりますので、是非弊社の担当スタッフにご相談ください。
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