第1回:店舗規模別の推移から見る薬局業界の予測
調剤薬局業界は、今までにない大きな転換期を迎えています。特に近年では年単位の薬価改定、ジェネリックの医薬品問題、対人業務へのシフトによる従業員の教育、ICT化の対応など、変化のスピードが速く、かつ経営課題の複雑化が中小薬局の経営に大きな影響を与えています。さらに、市場競争が激化し、業界全体が経営効率の改善を迫られている背景から、大手による市場の再編が進められつつあります。今回は連載形式にて、調剤薬局の市場動向について掲載いたします。
- 第1回:店舗規模別の推移から見る、薬局業界の予測
- 第2回:財務視点から見る、薬局業界再編の考察
- 第3回:マクロ環境変化から見る、薬局業界再編の考察
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目次 |
今後の薬局市場、どう変わっていく?
出典:筆者の独自作成した市場予測
上記グラフは、薬局業界において、規模別に店舗数がどう変遷するかを予測したグラフ(イメージ)です。縦軸は店舗数、横軸は時系列を表しています。
【結論】
2~5店舗の薬局の集約が落ち着いた後は、6~19店舗の薬局が集約されると予想されます。結果的に、1店舗経営の薬局、20店舗以上の地域薬局、全国展開の大手薬局の3つに分かれた薬局市場になることが予想されます。
20店舗以上を経営している薬局法人が、最も伸長している
出典:医療経済実態調査(グラフ色等を編集者加工;厚生労働省)
医療経営実態調査のデータを基に、CBが作成した上記のグラフから調剤薬局市場の全体感とトレンドを把握していきます。まずは、20店舗以上の薬局に注目していきます。グラフの通り、20店舗以上の薬局割合は顕著に増加しています。2015年と2021年で比較すると、2倍以上の伸び率となっており、最も勢いのある規模の層といえます。
20店舗以上の薬局が最も伸長している背景として、2021年の分業率は75.3%(日本薬剤師会発表)となっており、新規の店舗開発が難しく、店舗買収によって規模を増やしていく戦略があげられます。買収の視点も、薬局の戦略や特徴によって多様化しています。つまり、単純に店舗を増やすという買収から、「地域特化」・「科目特化」・「在宅拠点」などの目的をもった戦略的な買収にシフトしているのが実情です。
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小規模薬局の売却が続き、1店舗の運営に切り替える法人が増加
出典:医療経済実態調査(グラフ色等を編集者加工;厚生労働省)
次は、小規模薬局(1店舗および2~5店舗の薬局)に注目します。1店舗の薬局は徐々にその割合を増やし、2~5店舗の薬局は大きく割合を減らしていることが分かります。2~5店舗の薬局が減少する背景は、20店舗以上の薬局の買収ターゲットになっていることで間違いないと思います。では、なぜ1店舗経営が増えているのでしょうか?開業する薬剤師が増えていることも予想されますが、それ以外の要因として、店舗を売却した経営者の働き方や金銭事情に関係しているのではないかと考えられます。全店舗を売却して悠々自適な生活へと、第二の人生を楽しむ元経営者もいらっしゃる一方で、売却益だけでは将来にわたって安泰とは考えずに、働く先を確保する経営者が増加していると推察されます。その結果、1店舗経営が増えている状況に繋がっているのではないかと考えられます。
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6~19店舗を運営している薬局はほぼ横ばい
出典:医療経済実態調査(グラフ色等を編集者加工;厚生労働省)
最後に6~19店舗を運営している薬局に着目していきます。この層は2015年~2021年までの割合がほぼ横ばいで、大きな動きはありません。安定しているという見方もできますが、2~5店舗の集約が収束すれば、この層にも大きな変動の波が訪れてくると想定されます。
(理由・背景は次回コラムでお伝えします。)
つまり、今の経営体質を変えずに6~19店舗薬局を継続していくことは、今後困難になっていくと予想されますし、いまだ市場再編の波が到達していないからこそ、対策も打てると言えるでしょう。
次回は、「第2回:財務視点から見る、薬局業界再編の考察」をお送りいたします。
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