業界再編が進むと言われて久しい薬局業界ですが、実際に全国各地で様々な事例が出ています。今回は九州エリアにフォーカスを当てた、大手調剤薬局の動向についてお伝えします。
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一見、九州エリアは業界再編が進んでいないようにみえる
前提として、2022年4月の調剤報酬改定以降、大手調剤薬局チェーンによる現地法人の買収は、九州において影を潜めているように見えます。正式なプレスリリースがされたものでは、2021年3月に株式会社アインホールディングス(9627)と株式会社エス・ケー・ファーマシー(大分県大分市)の業務資本提携が発表されて以降、九州内ではじつに2年以上大きな動きがないように感じられます。
・業務資本提携のお知らせ(株式会社アインホールディングス)
なお、九州エリアは、関東エリアや関西エリアに比べて、業界のトレンドが時間をおいてやってくると言われています。しかし、果たして本当にそうなのでしょうか。
調剤基本料を基本料3-ロ、3-ハに変更した薬局がある
まず、厚生局の情報をチェックしますと、九州厚生局への届出受理状況においては、とある地場薬局チェーン(仮に、Aファーマシーと呼称します)の調剤基本料が基本料3-ロ、基本料3-ハの算定に変更されていました。薬局経営に携わる方であればご存じかもしれませんが、基本料3-ロ、基本料3-ハの算定要件は
- 「同一のグループ薬局全体の処方箋受付回数を合算」月40万回超
- または、グループ店舗数300店舗以上
上記のようになっています。つまり、プレスリリースで公にこそされていませんが、Aファーマシーは上記算定要件を満たす大手調剤薬局グループと資本関係を構築していることが推察されます。
代表者の名前を大手調剤薬局グループの代表者名と同姓同名に変更した薬局がある
また、福岡県薬局情報ネットを確認したところ、かなりの処方箋枚数を受け付けている薬局(仮にB薬局と呼称します)の代表者名が、大手調剤薬局グループの代表者と同姓同名に変更されていました。こちらも、プレスリリースで公にされておらず、同姓同名の別人は可能性としてあり得る話ですが、大手調剤薬局によるB薬局の買収が実行された可能性も否定はできません。
九州各県の大学病院における敷地内薬局の誘致
3例目は、大手薬局調剤グループの敷地内薬局開設です。すでに以下の情報が公表されています。
- 九州大学病院(2022年7月ニュース)
- 熊本大学病院(2022年5月公告)
- 鹿児島大学病院(2020年12月ニュース)
上記の3つの大学病院にて、敷地内薬局の優先交渉事業者が決定しています。敷地内薬局に関しては、診療報酬の点数にハードルがあることを踏まえても、九州エリアは他のエリアに比べて誘致が進んでいるとは言えません。全国的に大学病院における敷地内薬局の誘致が進んでいる昨今、九州エリアにおいても各大学病院の敷地内薬局誘致は進んでいくことが予想されます。こうした状況の中、薬局経営の観点で言えば、「病院門前は安泰」ではなく「リスク」になりつつある、という認識が九州エリアにおいても広まっていくのではないでしょうか。
水面下で行われる大手調剤薬局の九州エリア進出
これまでの事例を考えると、九州エリアにおいて大手調剤薬局チェーンは「進出を続けている」状況にあるのではないでしょうか。確かに、九州エリアは業界再編に関して、「進んでいない」と言う薬局経営者様もいらっしゃいます。しかし、公表された情報以外においても、水面下で大手調剤薬局チェーンが進出を続けていることが推測されます。もしかすると、気がついた際には業界再編の状況が進展しきっている可能性もあります。その頃には、「今選べる選択肢」が選択出来なくなっているかもしれません。
もし、経営についてのお困りごとやご相談がございましたら、余裕を持って物事を検討、決断出来るうちに専門家へのご相談をおすすめいたします。
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