当社が支援している承継開業について、個人開業を目指す薬剤師の方が、コロナ禍の落ち着きとともに増えています。一方で、金融機関の融資姿勢はコロナ禍前から大きく変化しました。開業に向けた今後の資金調達は、いっそう早めの準備が大切になっています。
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今は昔、薬剤師であれば2,000万円の融資が受けられた時代は過ぎさった
コロナ禍前の2018年から2019年に掛けて、調剤報酬改定の影響や薬剤師不足などから、薬局市場に一つの潮流が生じました。すなわち、大手をはじめとしたチェーン薬局による積極的な一部店舗の切り離しや、医薬分業初期に開業された個人薬局経営者の引退等による事業譲渡です。そうした店舗は、個人の開業希望薬剤師にとって、収益面や資金調達面でちょうど良い店舗も多かったことから、開業希望薬剤師による承継開業が一気に増加しました。創業融資に力を入れる金融機関は、他業種に比べて手堅いビジネスである調剤薬局事業を評価し、承継しようとする店舗の収益性、事業計画によっては、2,000万円の融資を行うケースも珍しくありませんでした。しかし、そうした融資姿勢はコロナ禍によって大きく変わりました。これから開業を目指す薬剤師の方は、金融機関の融資姿勢がコロナ禍前とは異なることをしっかりと認識したうえで、行動する必要があります。
コロナ禍を経て融資姿勢は変化した
コロナ禍においては、国の政策により創業融資よりも、無利子・無担保のいわゆるゼロゼロ融資に注力した金融機関ですが、コロナ禍の落ち着きとともに創業融資へと比重を戻しつつあります。ただし、コロナ禍前のように積極的な融資とはいかず、慎重な姿勢が目立ちます。いまやコロナ禍前の経営状態に戻れずに追加で融資を必要とする事業者も多く、もし初めから貸付上限額全額を創業融資として貸し付けてしまうと、追加融資が必要になったときに金融機関は対応できません。さらに、ポストコロナ禍の今日、返済が滞る事業者も増加していて、金融機関としては慎重にならざるを得ないようです。つまり、今後は必要な金額の半分しか融資が下りなかったり、融資自体を断られるケースが出てくるかもしれません。調剤薬局は比較的手堅いビジネスモデルとは言え、薬局業界の先行きを厳しく見る金融機関も増えており、資金調達がコロナ禍前のようにスムーズにいかない事態を想定しておく必要があります。とはいえ、創業融資は金融機関にとっても大きなテーマですので、他の金融機関と組んでの協調融資や、以前は創業融資には対応しなかった信用保証協会が保証を付けるようになるなど、良い変化も見られつつあります。金融機関によって、創業融資に対するスタンスは異なりますので、時間があれば複数の金融機関に足を運ぶなど、情報収集が欠かせません。
自身で事業計画をしっかり伝えられることが重要
慎重姿勢の金融機関に対して、どのように対応したらよいのでしょうか。実際のところ、大切なことはコロナ禍前後では大きく変わっていません。
- 承継しようとする店舗について、足元の収益性だけでなく今後の収益をよくシミュレーションすること。
- 自身の経験やスキルによって、収益を改善できる余地があるのであればしっかり説明すること。
- 仮に事業がうまく軌道に乗らなかったときの対応策を考えておくこと。
- 開業後に顧問を依頼する予定の税理士等がいれば相談に乗ってもらうこと。
もし承継したい案件が見つかったら、これらをしっかりと考えたうえで早めに金融機関に出向き相談しましょう。厳しくなりつつある融資環境ではありますが、自分の言葉で創業に懸ける想いや事業計画を伝えることで、金融機関からアドバイスや提案をもらうことができ、融資獲得に近づきます。
創業融資獲得に向けたセミナーを開催予定
株式会社CBコンサルティングでは、2023年7月以降に金融機関の方を講師に招き、昨今の創業融資の状況や資金調達のポイントなどを講演いただくセミナーを企画しています。開催が決定次第、弊社ホームページでご案内いたします。
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