厚生労働省から2024(令和6)年度診療報酬改定が告示されました。奇しくも前後して、ドラッグストアによる調剤薬局買収や大手ドラッグストア同士の統合という大きなM&Aのニュースも続いています。調剤報酬改定の流れもふまえ、薬局業界はどのように変わっていくのでしょうか?
本稿では、医療経済実態調査が示す運営薬局店舗数別シェアや店舗規模別の利益率・費用比率と調剤報酬改定のポイントをもとに、2024年度以降、薬局業界がどのように変化していくかを予測いたします。
運営薬局店舗数別シェアの変動
20店舗以上の薬局を運営する法人(グラフ赤枠)は、2023年までの10年で31.8%も店舗数シェアを伸ばしています。一方で、2~5店舗の法人(グラフ青枠)は、この10年で23.6%と大幅にシェアを落としています。例えば、2~5店舗の法人の経営が20店舗以上の法人に丸ごとM&Aで移譲されたり、2~5店舗の法人が一部切り離しを行っていたりする結果です。つまり、医薬分業の進展や薬局経営の高度化・複雑化などにより利益が頭打ちとなり、利益率の悪い店舗が譲渡に動いていることなどから、シェアが大きく変動していると考えられます。
店舗規模別の利益率・費用比率
次に店舗規模別の利益率や費用比率を見てみましょう。
営業利益率は、2020年までは規模が大きくなればなるほど高くなっています(表A)。大手チェーンを対象にした調剤基本料の評価見直しなどを背景に、2021年と2022年の営業利益率にはやや異なる傾向が見られますが、それでも依然として薬局経営には『規模の経済が働いている』といえます。まさに小売業の特徴である規模による経営効率の差が如実に表れたデータです。
人件費率差比較(表B)を見ていただくと、なぜ規模によって利益率が変わっていくのかが説明できます。人件費率には20店舗以上と5店舗以下とで約2倍もの開きがあります。規模の大きな法人では、新卒採用の強化や戦略的な人事制度活用などによって、利益率を大きく左右するファクターとなる人件費を適切にコントロールしています。また、総務や人事労務、経理などのバックオフィス機能(本部機能)を集約化することで、経営効率を上げています。その他経費比較において20店舗以上の比率が高くなっている(表C)のは、バックオフィス機能(本部機能)の諸経費が計上されているためです。
調剤報酬改定の影響は?
2024(令和6)年度の調剤報酬改定では、地域支援体制加算が一律7点減算されます。このマイナスをどうカバーするかがポイントとなりますが、もしその方策を立てられない店舗があれば、早晩に店舗整理(譲渡)をせざるを得ない状況に陥る可能性もあります。また、処遇改善をどう実現していくかも、経営者にとっては大きな関心ごとでしょう。大手チェーンは賃金UPを明確に表明しています。調剤基本料は3点プラスとなりますが、従業員の賃金に充てていかなければ、薬剤師に選ばれず人材確保に苦しむことにもなりかねません。
このような状況に鑑みると、利益率の低い、店舗数が少ない法人から淘汰される可能性が高く、今回の調剤報酬改定はそれを加速させる要因になるといえます。
加えて、調剤薬局業界には、ドラッグストアの参入やファンドによる大手チェーンの買収などプレイヤーも増えています。この先、規制改革がさらに進めばAmazonなどの業界外からの参入などもあり得るでしょう。
薬局経営者は、今後、どのように生き残っていくのか改めて考えていく必要がありそうです。
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