さど調剤グループ(新潟県・佐渡市)では、2023年4月からの組織改編に伴い、新人事制度の運用がスタートします。地域で“輝く”薬局を目指し、事業拡大のための組織改編と、従業員が働きやすく、やりがいを感じながら働けるような人事制度の構築を決断しました。 そこにかけた想いや今後の展望について、4月より、創業者よりバトンを受け、30代前半にして、さど調剤グループの株式会社アイサで代表取締役に就任する光谷 良太 様と、新人事制度の構築に携わってこられた林 様、大平 様にお話を伺いました。
※写真左から、光谷様、林様、大平様、弊社コンサルタント
薬局業界の動向を踏まえた組織改編
―組織改編に至ったきっかけ・背景について教えてください
光谷 様 :報酬改定や新型コロナウイルス感染症感染拡大などさまざまな影響を受けて、薬局業界を取り巻く経営環境や、薬局・薬剤師に求められる機能は日々、変化し続けています。これまで以上に、きちんと戦略を立てて経営する力が求められるなか、グループ全体を一つの組織として捉えて経営することが大切だと考えたことが今回、組織改編を行うに至ったきっかけです。
今回の組織改編における主な変更点は三点あり、一点目は、三つある法人のうちの二つを合併すること、二点目は、代表者を変更すること、三点目は、合併と代表者の変更に伴い、人事面の仕組みを構築し、運用することです。
―光谷様の代表取締役就任を機に、人事制度の構築も決断されたと伺いました
光谷 様 :私が以前に勤めていた薬局では人事制度がきちんと整備されており、その頃から組織経営において、人事制度の必要性を感じていました。
長年、社内の仕組みや規定が見直されていなかったことで、2019年に私がさど調剤グループに入社して以降、実際に、組織運営上支障が出たこともありました。そんな中でも、社員の皆さんが、患者さんや地域のために活躍し、患者さんと信頼関係を築いている様子を多く目にしてきました。
特に医療の制約もある離島の佐渡市では、薬局は「薬を渡す」だけではなく、「薬に関わる問題全般を解決し、安心を提供する」ことが求められます。そのためには、経営の要素の中でも“ヒト”に関わる部分を重要視する必要があります。人事制度運用で個人の頑張りが会社の発展につながり、地域の方が喜ぶ。その良い循環を生む必要があると感じたと同時に、人事制度が整備されていない状態で、経営を続けていくことに限界を感じていたのです。そのため、今回の組織改編を機に、人事制度の構築を決断しました。
変化の多い経営環境だからこそ、素早く情報を収集して対応することが大切です。そこで、私のこれまでの経験やノウハウを活かしていきたいと考えています。
従業員が働きやすく、やりがいを感じられるように人事制度の構築を決断
―以前から人事制度の構築を検討されていたなかで、今回、決断された決め手は何ですか?
光谷 様 :組織改編を良い機会とし、50名を超えるまでに規模が拡大したさど調剤グループで、組織の骨組みを形成し、固めていきたいと考えたためです。
従業員から、「組織のなかでの立ち位置が分からず、悩んでいる」「何をどこまで頑張ると、どのように評価されるかが分からない」「自分自身が成長のステップを歩めているかが分からず、不安に感じている」といった声が、以前からあがっていました。 これらの声を踏まえて、人事制度の整備について早急に対応しなければならないと感じていた一方で、変化に伴う従業員の離職等のリスクや、日々の業務に追われ、まとまった時間を作ることが難しく、なかなか決断できずにいました。
今回、私自身の代表取締役就任を機に、これまでなかった制度を新しく構築、運用することで従業員が活躍し、会社が発展していく環境を整えたいと考え、決断しました。
目指す姿を実現するための組織作りや等級の設定には苦労も
―人事制度を構築するうえで、苦労されたことは何ですか?
大平 様 :これまで具体的な基準が定まっていないなかで、従業員一人ひとりが、それぞれ会社のため、患者さんのために動いてきました。これは当社の強みです。しかし、その頑張りのすべてをキャッチアップできているわけではなかったので、皆さんが各等級のどこに当てはまるのか、的確に設定できているかという点には難しさも感じました。
光谷 様 :5年後を見据えた組織図を作る過程では、想像していた以上に苦労がありました。
5年後、当社がありたい姿はどんな姿で、目指す姿に近づくために必要な組織はどのような組織なのか、コンサルタントの方ときちんと時間をとって考えました。そこが明確になることで、これから1年後、さらには2年後までにやるべきことが明確になりました。具体的に言語化することで、当社が目指す姿の解像度を高くできたことは、難しさを感じつつも、会社の将来像を考えるうえで、非常にためになりました。この過程は会社の代表になるために必要な試練だったのかもしれません。約半年間、会社の将来ときちんと向き合う時間を作ることができて嬉しく思います。
従業員の成長を支援する、従業員のための人事制度
―人事制度の構築を第三者に依頼して良かったことを教えてください
林 様 :既定の型に当てはめるのではなく、コンサルタントの方が当社のことをきちんと理解し、支援くださったので、当社に合う人事制度を構築できたことを嬉しく思います。
まさに、従業員一人ひとりの成長を支援する、従業員のための制度構築ができて良かったです。
光谷 様 :私ははじめ、従業員のやる気ややりがいに繋げるために、インセンティブ制の導入を検討していました。一方で、コンサルタントの方から、「さど調剤グループの強みは、地域のため、患者さんのために何ができるか真剣に考えられる従業員が多いこと。だからこそ、インセンティブ制の導入は社風には合わないのではないか。スタッフの皆さんが患者さんにしっかりと向き合うホスピタリティの精神と行動を評価軸として、その結果を報酬に繋げることで、御社が目指す「地域に安心を届け、笑顔を創る」という理念に近づけるはずだ」と意見をいただきました。
実際に、その軸を大切にすることが当社の雰囲気や社風に合う、と言われ、私自身、ハッとしました。当社のことをよく理解したうえで、第三者の視点からアドバイスをくださることは有難いですし、だからこそ、今回、会社のためになる、従業員のためになる人事制度を構築することができたと感じています。
人事制度で従業員全員が一つに
―4月からの運用スタートに際し、楽しみにしていることや期待していることは何ですか?
大平 様 :さど調剤グループの従業員全員が、目標について共通の認識を持って進むことができることは楽しみでもあり、期待もしています。会社が従業員に求めているあり方を具体的に開示することで、一人ひとりが会社の方向性を確認し、ステップアップを目指してほしいです。また、この度クレド(企業全体で心がける信条や行動指針)を社員全員で策定することも決まりました。この会社の良い文化や大切にしたい考え方を言語化し、社員全員で大事にしていけることは、とても楽しみです。
光谷 様 :今回、会社が目指す姿に近づくために、新たなポジションや役職を設けました。これらが従業員にとって一つの目標となり、育っていってほしいという期待はあります。また、今回、人事制度運用の仕組みの一つとして、管理職とメンバーが定期的なコミュニケーションをとる機会も設けています。積極的なコミュニケーションを通じて、さらに活気溢れる職場となることも期待しています。ベテランの従業員には、若い世代が活躍できるように、これまでの経験やキャリアを還元することで背中を押してあげてほしいという期待も大きいですね。
実際に、従業員説明会後に個別面談を全社員と行いましたが、「モチベーションが上がります!」という声もあり、今後がとても楽しみです。
この町で“輝く”薬局を目指して
―今後の展望について教えてください
光谷 様 :離島というエリアの特性上、医療支援も薬剤師の数も少ないなかで、生活の基盤となる薬局が、地域の皆さんにとっていつでも相談できる、そんな居心地の良い場所になってほしいと考えています。今後、これから運用がスタートする人事制度を通じて、活躍し、成長していく従業員が増えていくと非常に嬉しいです。
医療支援が少ないエリアだからこそ、薬局が、当社がこの町で“輝いていきたい”、そんな未来を実現したいですし、そのきっかけの一つとして、人事制度が活きてくると非常に嬉しく思います。
~新人事制度について、従業員説明会の様子を一部ご紹介~
3月1日(水)18:30~19:30に、4月より運用がスタートとなる新人事制度について、従業員の方への説明会が実施されました。
当日は二部構成で、第一部では、4月より代表取締役に就任される光谷様から、会社の成長基盤として今回、人事制度構築を決断されたことや、新人事制度に込められた想い、今後の組織についてお話がありました。
第二部では、本人事制度の構築に携わってきた当社コンサルタントより、概要についてお話がありました。
最後に、就業規則や規定、規則について、林様からお話があり、約1時間の説明会は終了しました。
今回の人事制度構築は、従業員の皆さんの成長のためであるということをご理解いただいている、そのような様子が印象的でした。