広島県内で、すがはら薬局(広島県福山市)を運営していた菅原 康洋 様は、2022年10月に、後継者がいないことが大きな理由となり、同じく広島県内で薬局を運営している法人への譲渡をご経験されました。病院薬剤師を経て、開業を決意されてから約18年間、地域の患者様に寄り添い運営されてきた薬局を、他法人にご譲渡されるに至った経緯について、菅原 康洋 様にお話しを伺いました。
病院薬剤師から一転、承継開業を決意
―すがはら薬局を開業されたきっかけを教えてください
私は、すがはら薬局を開業する前に病院薬剤師として勤めていました。当時、病院内も薬剤課内も運営に苦労が絶えず、私自身も疲弊していました。そのような落ち着かない環境の中で、このまま病院薬剤師を続けていくよりは、環境を変えて、自身の新たな挑戦に一歩を踏み出したいと考えたことが、開業のきっかけです。
妻にも後押ししてもらい開業に向けて動き始めました。一方で、すぐに良いお話に出会ったわけではなく、しばらく病院薬剤師として勤務し続け、五年後に念願叶い素敵なご縁にも恵まれて、すがはら薬局を承継開業しました。
―病院薬剤師として勤務されていた頃と比較して、どのような心境の変化がありましたか?
そうですね。やはり事業を継続していくうえでの責任は、地域の患者様や従業員、そして家族に対しても、開業後の方が圧倒的に大きく感じていました。重みのある責任が伴う挑戦でしたが、私の開業を機に、これまで活躍してきた保育業界から一転、薬局業界に足を踏み入れ、約18年間、私とともに走り続けてくれた妻の存在もあり、充実感ややりがいを持って、経営・運営をすることができました。
後継者不在に伴う引退から、譲渡の検討をスタート
―譲渡について、いつ頃から検討されていましたか?
私には後継者がいないので、譲渡について、二・三年前から考えていました。
ちょうど一年前に、お付き合いがある税理士の方から、譲受先候補の方がいらっしゃるというお話をいただき、実際に、譲渡に向けて一度動いたこともありました。一方で、一点目に、土曜日や祝日も開局していること、二点目に、門前クリニックが二診体制で、かつ人工透析も扱っており、十分な薬剤師数が必要だということ、三点目に、高齢者施設の在宅業務も行っていることがハードルとなり、お話がまとまりませんでした。
そんな時に、出会ったのがCBコンサルティングのコンサルタントの方でした。2022年4月に、譲渡について相談し、5月中旬に財務資料をお渡ししました。それから5月下旬には、価値算定資料をいただき、具体的に譲受先候補の方との面談がスタートしました。
―スピード感をもってお話が進んだんですね
そうですね。譲受先候補の方との面談も、初対面ではありましたが非常に好印象を持ちました。それから、6月中旬には譲渡契約書を締結しました。実際に資料をお渡ししてから2ヵ月経たずにお話がまとまりましたね。9月には、譲渡後の人員配置も決まり、10月に譲渡が完了しました。
現在も、常勤薬剤師3名、パート薬剤師1名と、十分な人員で経営・運営されていることを嬉しく思っています。
十分な人員体制で経営・運営してくださる方という基準を最優先に
―譲受先を決断された際の決め手を教えてください
常勤薬剤師を3名、確保したうえで承継することが可能だということを明言されたことです。譲渡後は、私も妻も引退することを決めていましたし、私たちと一緒に勤務していた常勤薬剤師と常勤事務職の方も離職することを決めていたので、私たちがいなくなっても、しっかりとした人員体制で薬局を経営・運営してくださる方という基準を最優先に考えていました。
私たちが経営していた頃はギリギリの人員体制で、疲弊していた部分もあったので、現在は、当時より多い3.5人で経営されているというお話も聞いて、安心していますし、お任せして良かったと心から思っています。
また、既に人工透析の処方対応も行っていた法人なので、その点も安心してお任せできています。
譲渡を進めるうえでのポイントは「優先順位を付けること」
―譲渡を進めていく過程で、苦労されたことや難しさを感じた場面はありましたか?
今回、CBコンサルティングのコンサルタントの方に進めていただいた過程では、特に苦労など、難しさを感じた場面はありませんでした。以前、税理士の方経由で進めた際にハードルとなった点を、事前にコンサルタントの方にお話し、それを踏まえて動いていただいた点が大きかったように思います。譲渡対価についても揉めることなく、非常に円滑に、かつスピーディーに進めていただきました。
―譲歩できる部分とそうではない部分と、優先順位がきちんと定まっていたことも良かった点ですね。
そうですね。今回、いくつかハードルとなる点がある中で、しっかりとした人員体制で薬局を経営してくださる方という点を最優先に、それ以外は、譲歩できる部分としてお話を進めてもらいました。全てが想定通りに進むことに越したことはありませんが、なかなかそういうわけにもいかないので、きちんと優先順位を付けて進めることができたことは、一つのポイントになりますね。
―処方元の先生にお話された際の反応はいかがでしたか?
すがはら薬局を開業して約18年間、ともに歩んできた先生ですし、私に信頼を置いてくださっていた先生なので、悲しさやショックに感じられているということは、場面場面で垣間見えました。私も正直に言うと、私たちだけ先に引退してしまうことに、少なからず引け目を感じていた部分もありました。
一方で、私たちの真剣な想いをくみ取ってくださり、前向きに背中を押してくださった先生には感謝しています。今でも、プライベートでは手紙をやり取りするなど、交流もありますよ。
今後は、趣味や社会貢献の取り組みも
―今後、取り組んでいきたいことなどはありますか?
土曜日や祝日も開局している薬局なので、これまで私も妻も、薬局の経営・運営に掛かり切りで、趣味やプライベートに割く時間をなかなか作れませんでした。今後は、二人で一緒に登山や散歩を通して、健康的に趣味を楽しんでいきたいです。国内旅行や、引退後に始めたマラソンも楽しみたいですね。
また、まだ模索中ですが、医療人として何か社会貢献活動にも取り組んでいきたいと考えています。
―社会貢献について、何か考えられていることはありますか?
具体的なことはこれから考えていきますが、薬剤師の資格や経験を活かして、臨時ダイヤで不足している枠や、夜間に不足している枠を埋めていきたいです。また、私は公認スポーツファーマシストなので、その資格も活かした活動に取り組んでいきたいです。他にも、社会貢献に資する活動であれば何でも、興味を持って積極的に取り組んでいきたいと考えています。
さいごに、CBグループに一言お願いします
ちょうど一年前の2022年4月に、CBコンサルティングのコンサルタントの方が訪問され、声を掛けられたことが私たちの出会いでした。それから相談を重ね、2022年10月に、無事に譲渡完了日を迎えられたことにホッとしていますし、感謝しています。
譲渡完了に至るまでの過程では、譲受先に向けた開示用資料の作成や面談実施に向けた準備、社内告知・調整など、初めての経験で分からないこともありますし、様ざまな場面で手間や労力もかかります。これらを、これまで業界特化で支援されてきたCBコンサルティングのコンサルタントの方が、支援・フォローくださることで、特に苦労することなくお話がまとまりましたし、何より心強かったです。