2025年4月に実施される調剤報酬の臨時改定(中間改定)では、「医療DX推進体制整備加算」に関する見直しが行われます。本コラムでは、改定の概要や具体的な変更点、薬局が取るべき対応について詳しく解説します。
「医療DX推進体制整備加算」の概要
医療DX推進体制整備加算は、医療DXを推進する体制を整備している薬局が、月1回まで算定できる調剤基本料の加算です。薬局や医療機関がデジタル技術を活用し、効率的かつ質の高い医療を提供するための基盤整備を支援するため、2024年度の調剤報酬改定で新設されました。
薬局は、医療DXの流れに対応することで、単なる「薬の受け渡しの場」から「患者の健康を支える情報提供拠点」へと進化していくことが求められています。報酬制度にそった対応をすることで、加算を適切に活用しながら持続可能な経営を実現することが可能です。
体制整備の評価としては、以下の施設基準が設けられています。
(1)オンライン請求を行っていること。
(2)オンライン資格確認を行う体制を有していること。
(3)保険薬剤師が、オンライン資格確認の仕組みを利用して取得した診療情報を閲覧又は活用し、調剤できる体制を有していること。
(4)「電子処方箋を受け付けて調剤する体制」とともに「紙の処方箋で受け付けて調剤した場合を含めて、原則としてすべての調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスに登録する」こと。※2025年4月1日より見直し。2025年3月までは体制整備のみ、かつ経過措置。
(5)電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること。(経過措置:2025年9月30日まで)
(6)マイナンバーカードの健康保険証利用の使用について、実績を一定程度有していること。
(7)医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医 療機関の見やすい場所及びウェブサイト等に掲示していること。
(8)電磁的記録による調剤録及び薬剤服用歴の管理の体制を有していること。
<出典>
医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて(厚生労働省)
医療DX推進体制整備加算及び在宅医療DX情報活用加算の見直し(2025年1月29日中央社会保険医療協議会 総会(第603回))
2025年4月の臨時改定の概要
今回の「医療DX推進体制整備加算」見直しのポイントは以下のとおりです。
- 電子処方箋対応の義務化(紙処方箋を含めた調剤結果の登録)
電子処方箋による調剤の対応は、2025年3月までは「体制整備」のみが要件とされ、さらに経過措置として扱われていました。しかし、2025年4月以降は経過措置が終了し、以下の新たな施設基準が求められます。
‐電子処方箋を受け付けて調剤する体制を整備すること
‐紙の処方箋で受け付けて調剤した場合も含めて、原則としてすべての調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスへ登録すること - マイナ保険証利用実績の基準引き上げ
マイナ保険証利用率の3段階の評価基準が変更され、「10%/20%/30%」から「15%/30%/45%」へと引き上げられます。なお、2025年10月以降の基準については未定で、2025年7月をめどに検討・設定される予定です。
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加算点数の見直し
上述したマイナ保険証の利用実績要件の引き上げや、電子処方箋対応体制義務化に伴う薬局負担増加をふまえ、加算点数が見直されます。改定後の加算点数は以下の通りです。
▼マイナ保険証利用率の施設基準と点数の増減
<出典>医療DX推進体制整備加算及び在宅医療DX情報活用加算の見直し(2025年1月29日中央社会保険医療協議会 総会(第603回))
薬局経営への影響と対策
今回の「医療DX推進体制整備加算」の見直しは、加算点数が引き上げられる一方で、要件も厳格化されるため、対応が求められます。特に、2025年3月まで4点を算定できていたマイナ保険証の利用率「10%以上15%未満」の薬局は、算定ができなくなるため注意が必要です。それ以外の薬局も、マイナ保険証利用率評価の目線は今後も徐々に上がっていくでしょうから、継続的な取り組みが不可欠です。
以下、2025年4月の臨時改定に限らず、中期的な視点で薬局経営への影響と対策を整理してみましょう。
影響
- マイナ保険証利用率向上のための患者対応強化が必要
- 業務負担の増加(紙処方箋の登録業務など)
- システム導入/整備コストの増加
対策
- マイナ保険証の利用促進策の推進
・患者への啓発活動を強化(ポスター・リーフレット活用)
・窓口での積極的な案内
・利用方法の簡便化(スタッフ教育の徹底) - 業務負担軽減策の導入
・スタッフ教育と役割分担の見直し
・システムやツールの活用 - 電子処方箋対応の早期整備
・システム導入を早めに検討
・他薬局の事例を参考に運用フローを最適化
▼<参考>マイナ保険証利用率の施設基準のこれまでの見直し
<出典>
令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】(厚生労働省)
医療DX推進体制整備加算及び在宅医療DX情報活用加算の見直し(2025年1月29日中央社会保険医療協議会 総会(第603回))
まとめ
本コラムで見てきたとおり、「医療DX推進体制整備加算」算定の要件が示すのは、薬局の役割を強化し、患者によりよい医療を提供するための重要な取り組みです。今後の医療の方向性を考えれば、電子処方箋への対応やマイナ保険証利用率の向上は、薬局経営が避けては通れない課題と言えるでしょう。新制度に適応しながら加算を最大限に活用する戦略を立てる必要があります。
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